フランク:ヴァイオリン・ソナタ

近年はレスパス弦楽四重奏団の第1ヴァイオリンを務めるなど室内楽にも意欲的な鍵冨弦太郎が、才気溢れる沼沢淑音のピアノを得て実現させた好プログラム。中心に据えられているのは、スペイン内戦での詩人ロルカ訃報の衝撃を受けて書かれたプーランクの異色作、ヴァイオリン・ソナタと、上田秋成の『雨月物語』を隠れテキストとする鈴木輝昭の「スピリチュエルⅢ」(2018年に鍵冨と沼沢により初演)。どちらも人の世の不条理である“死”をみつめた不穏な空気を漂わせているが、それをショーソン「詩曲」とフランクの表題曲が巧みなグラデーションで包んでいる。

文:東端哲也(ぶらあぼ2019年9月号)

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